一枚にかける美しい努力 | カメラマン・natsu | ISSUE #22

10年以上にわたり、カメラを手にしてきたnatsuさん。彼女のインスタグラムアカウントには驚くような数、1.9万件の写真投稿があります。この数字は、単なる数字以上のものを語っています。1.9万は、10年間、毎日写真を投稿しても1日に5枚はアップロードしなければならない数字を示します。デジタル化によって、便利になったと口で言うのは簡単なものの、これだけ撮り続けられる人はそうそういないでしょう。デジタルカメラの便利さを活用しながらも、このような精力的な取り組みから、natsuさんの写真への特別な愛と長く根気強く続ける人柄が映し出されます。

natsuさんも最初は誰もが始めるかのように、インスタグラムでスマートフォンのカメラを使用して写真を投稿していたそうです。余談ですが、サービスリリース当初のインスタグラムとは、高いクォリティーの写真が多い今と異なり、もっと写真日記に近い感覚の写真が多かったようです。

のちに周囲のフォロワーさんが、徐々に一眼レフへと移行するにあたって、natsuさんも写真への深い興味が生まれました。最初のカメラはニコンの初心者モデル。その後、ペンタックス、富士フィルム、キヤノンなど様々なブランドのカメラを試しながら、SONYα7Ⅳにたどり着きました。各カメラの色味や特徴を肌で感じながも、SONYの軽量ながら優れた精度のある撮影能力に今やフィットしたようです。

10年間、いろんなジャンルの写真を撮影されてきたnatsuさん。日々の生活を切り取った記録写真から始まり、風景、電車、花など、多岐にわたるジャンルを経て、今は風景写真に焦点を絞るようになりました。

写真を始めたばかりの頃は、写真教室に参加し、基本的な技術や構図を学びましたが、実際の写真撮影技術は、インスタグラムや他のコミュニティでのやりとり、現場での経験から多くを学んできたそうです。特に、熟練したカメラマンからのアドバイスが彼女の技術向上に大きく影響します。「他のカメラマンから学ぶことは多いです。撮影地でいろんなカメラマンさんとの出会いが、私の視野を広げてくれました」とnatsuさんは振り返ります。そんな彼女はインスタグラムで写真家の投稿を見て撮影場所のアイデアを得て、週末を中心に精力的にロケハンに出かけています。

ロケハンに出かけるたびに、新しいジャンルのカメラマンとの出会いがあり、それが次の目的地への道しるべとなる。そのようなnatsuさんの話からは、楽しく過ごすための好循環が感じられます。

冬の撮影は気象条件のため難しい面もありますが、樹氷や雪の風景を美しく捉えるために、natsuさんは多大な努力をしています。天気予報が当たらないこともしばしばあり、雪山を歩いたり、厳しい寒さの中で最高の瞬間を待つのは相当な苦労です。「そうした苦労を乗り越えたときに見る朝日や夕日の光は、格別に美しいんです」とnatsuさんは語ります。寒さ対策はとても重要で、中にはハクキンカイロを使うおじいさんのカメラマンに出会うという話にはレトロな魅力が感じられます。

だからこそ、冬の美しい写真には、美しさとともにカメラマンの意志が感じられます。他の写真家が苦労して撮影していることが伝わってくる作品に惹かれることも多々あるようです。natsuさん自身も新たな場所への探求心を喚起させ、実際に訪れたくなるような写真を撮ることを日頃から心掛けているようです。そんな冬の写真は見る者にストーリーを感じさせ、冒険への憧れを抱かせる力を持っています。

いかがでしたでしょうか。natsuさんのインタビューを通して、今回の「Winter Magic」写真コンテストへの撮影や鑑賞に関して新たなインスピレーションを得られたなら、大変嬉しく思います。natsuさんのように、実際に活躍されているカメラマンさんの裏話も楽しみながら、皆さんも自身の写真撮影の旅を楽しんでください。

(cover image by natsu)