遠くにあるはずの背景が、手前にある被写体の近くまで迫っているような写真を見たことはありませんか?
この現象は圧縮効果と呼ばれ、遠くの背景が近くに見え、被写体と背景の距離が縮まって感じられる視覚的な現象です。特に望遠レンズを使うことで、被写体と背景が圧縮されて写るこの効果を利用すると、写真に迫力や奥行きを加えることができます。
今回は、圧縮効果の原理と実際の写真撮影での活用方法について詳しくご紹介します。
圧縮効果とは
圧縮効果は、レンズの焦点距離とカメラ、被写体、背景の距離関係によって生じます。望遠レンズを使用して、被写体から離れた場所から撮影すると、背景が引き寄せられて見え、被写体と背景が圧縮されたように感じられます。これにより、背景が強調され、被写体とのコントラストが際立つため、写真全体に迫力が生まれます。
圧縮効果の仕組み
圧縮効果は、レンズの焦点距離そのものよりも、カメラと被写体、そして背景との相対的な距離の変化によって生まれます。被写体から離れて撮影し、さらに焦点距離の長いレンズを使用すると、背景が圧縮され、被写体との距離が縮まったように見えます。
上図のように、カメラのレンズはそれぞれ画角が異なります。一般的に、焦点距離が短い広角レンズのほうが画角が広くなり、焦点距離の長い望遠レンズのほうが狭くなります。
一般的に、近いものほど大きく、遠いものほど小さく見えます。いわゆる遠近感ですね。しかし、このような画角の関係上、望遠レンズでは背景に写るものも大きく捉えることができます。結果的に遠近感が薄れ、下の図のように見え方に違いが生じるのです。
なお、標準レンズや広角レンズでも圧縮効果を生み出すことは可能ですが、トリミングが前提となります。その際、画質が低下する点に注意しましょう。
圧縮効果の実践と応用
では実際に、圧縮効果を利用した写真を他にもいくつか見てみましょう。
建物風景
圧縮効果を活かすためには、被写体と背景の距離を意識することが重要です。風景写真やポートレート写真で特に効果的で、背景をより大きく、迫力のあるものに見せることができます。山岳風景を背景に使うことが多いですが、この写真のように、高いビルや塔も有効的です。
お花畑
一面の花畑では、圧縮効果により密集感をさらに強くさせることができます。人が被写体になると、まるで花々に埋もれているかのような演出も…。
月を使って
被写体と背景の距離が遠いほど、圧縮効果は強く現れます。月を利用するとその効果はてきめん。幻想的な写真に挑戦してみるのもいいかもしれませんね。