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2024.03.21

写し出したいのは人と動物の共存の可能性 | 動物写真家・Yoshihiko Sato | ISSUE #30

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cover image by sato

世界中のクリエーターの感性や思考を深掘りする『ISSUE』。新たなインスピレーションのきっかけに。『ISSUE #30』では、cizucu主宰のフォトコンテスト『Cat Day』のオフィシャルキュレーターであり、 人と動物の共存をテーマに撮影する動物写真家・Yoshihiko Satoさんを紹介します。

Satoさんは、新聞社の記者やIT業界の役員を経て独立、仕事の傍らで動物撮影をライフワークにし人と動物の共生について深く思索しています。

新聞社からIT業界 そして写真家の道へ

Satoさんのキャリアは新聞記者としてスタートしました。当時、彼は取材現場でフィルムカメラを使用していましたが、写真への興味が深まるほどではありませんでした。

「プログラミングに手を出したり、社内データの整理に取り組んだのが始まりでした。インターネットの時代が到来し、これは産業革命に匹敵する変革が起こる予感がしていました」と、転職のきっかけを振り返ります。

新しい可能性を追求し新聞社での経験を経てIT業界へ転職した後、独立します。

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Image by sato

ある日、ホームページ制作の仕事を受けた際、画像素材の不足に直面しました。「素材が足りないことに気づき、自分で写真を撮り始めたんです。それがきっかけでデジタルカメラの便利さや、フィルム時代には考えられなかった表現の自由を実感しました」

この出来事が、彼の心の奥底に長い間じわじわと育ってきた情熱を再び燃え上がらせることになります。

猫写真術の追求

Satoさんが猫写真を撮り始めたのは、ある日家の猫をデジタルカメラで撮影してみたことがきっかけでした。
家の猫をデジタルカメラで撮ってみたら、「なかなかちょっと絵になるな」と気軽に始めたのが予想外に面白く、それから写真集を手に取ったり、動物写真家〈岩合光昭〉さんの動物写真に出会ったりして猫写真にどっぷり「ハマる」ようになります。

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Image by sato

「最近はもうソニーのα9ばっかり使っていますね」とのこと。撮影ではシャッタースピードやISO感度、オートフォーカスの設定にこだわり猫の躍動感を表現するために、常に技術の改善を求めています。「同じ猫でも顔の色や模様によって、測光設定やISOの設定を変えることで上手く撮れることもある」といった細かな撮影の裏話も多くあるようです。

「動きの速い猫を撮影する際のオートフォーカス設定やシャッタースピード、ISO感度など、ピントの合わせ方や露出設定について研究を重ねています」と話します。

猫島で目にした現実

Satoさんが猫写真に情熱を傾ける理由は、単に美しい写真を撮りたいという理由だけではありません。猫島での撮影を通じて「動物は素晴らしい存在だ」と再認識し、人と動物の共存について深く考えるようになりました。

例えば猫島を訪れた際、TNR(捕獲・去勢・放獣)活動がもたらした変化に驚きました。TNRは、猫の過剰な繁殖を防ぎ、地域猫として健康に暮らせるよう支援するための手法。

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Image by sato

「昔は猫で溢れていたのに、今ではほとんど見かけない島が増えています」
しかし、TNR活動の結果、かつて猫で賑わっていた島の猫の数が劇的に減少していると実感しているSatoさん。TNR活動が猫の福祉を意図しているものの、実際は人間中心の生息数調整を行っているという見方もできます。この答えのない議論にSatoさんは複雑な感情を抱いています。

猫と人間の共存、動物と人間の関係性が動物写真には写し出されます。

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Image by sato

「撮影していると、動物の素晴らしさを改めて感じます」と語るSatoさん。動物写真が人々にとって何かを感じさせるきっかけになればと願っています。

以前は猫じゃらしを使って猫を飛ばして撮影することもあったそうですが、今はそういった方法は取らず、動物を尊重する撮影を心がけています。「ただ面白い写真を撮るのではなく、もっと動物を尊重する観点から写真を撮りたいです」と彼は語ります。
動物を尊重しすぐに行動に移せるアクション、例え一枚のシャッターを切るだけでも、そこに気持ちを込めることの重要性に気づかされます。

考え続けたい共生のゆくえ

Satoさんは写真を通じて、人と動物のより良い共存の方法を模索し、それを伝えたいと考えています。「どうすればもっとうまく共存できるか、そのきっかけを提供したいです」と彼は希望を語ります。また、猫や他の動物との共存に関する課題に対し、一面的な意見ではなく、多面的な視点から自ら調査し、理解を深めることの大切さを強調しています。

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Image by sato

「答えは簡単には見つからないと思います。しかし、この問題に直面した私たちが他人の言葉を鵜呑みにせず、自分で調べ、理解を深めることが大切です」とSatoさんは語ります。

家の猫を撮影することから始まり、やがて猫島への旅に発展。Satoさんの写真には、猫たちの自然な姿や彼らの持つ野生の美しさが、リアルに切り取られています。

INFORMATION

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Yoshihiko Sato

新聞社の記者やIT業界の役員を経て独立、仕事の傍らで動物撮影をライフワークにし人と動物の共生について深く思索しています。
主に猫島や牛舎での猫を撮影しているほか、猿、鹿、リスなどの様々な動物の写真も手掛けています。

cizucu:sato
Instagram:@sato.nekohiko

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