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2023.12.17

撮り続けることで見えた道筋 | 写真家・Mitsuru Wakabayashi | ISSUE #19

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デニムのブランドの店長およびビジュアルマーチャンダイザーとして、アパレル業界で8年間のキャリアを積んでいたWakabayashi Mitsuruさん。しかし、30代を迎えたことをきっかえに、写真の世界に足を踏み入れることに。今や京都を拠点に世界を股にかけて活動されている写真家として知られているが、その裏には数々の挑戦、写真へ無我夢中になるほどの努力があった。

外の世界を知りたい衝動

「30歳になり、長らく勤めたアパレル業界を離れることにしたのは、単純に外の世界を知らなかったから」と語るMitsuruさん。外の世界を知るための手段として、当時の彼はワーキングホリデーを選んだ。

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© Mitsuru Wakabayashi

「30歳までのデッドラインがあるため、後から言い訳ができない、即座に行動に移す必要があった」と考えたMitsuruさんは、30歳の誕生日を迎えると同時に退職し、実家のある京都に戻った。そして、1年間はワーキングホリデーのためのお金を貯めて、31歳を迎える直前にカナダへ渡航することにする。この間、趣味で始めたカメラが写真家・Mitsuru Wakabayashiとしての出発点になるとは、想像していなかっただろう。

Instagramに上げた毎日の写真が転機となる

お金を貯めるだけの生活は思いのほか窮屈なもので、何か趣味を探していたところ行きつけのコーヒーショップのマネージャーから〈SONY α7〉をおすすめされた。カメラはワーキングホリデー期間中にも使うだろうと考えて購入した。

最初は、趣味としてInstagram上に毎日投稿していたスナップ写真。想定していたことではないがInstagramの「おすすめユーザー」として認定され、フォロワーが1万人以上に増えていた。気楽に投稿することが難しい状況になってしまったが、だからこそ毎日撮影する写真のアウトプット先として意識し、写真を撮り上げ続けた。

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© Mitsuru Wakabayashi 

いざワーキングホリデーにいくとなったとき、選んだ渡航先はカナダのトロント。ニューヨークが近く、ファッショナブルな文化に触れられると同時に、カナダの大自然も楽しめる理想の場所だった。日本での習慣も続き、現地の風景を毎日撮影、毎日投稿する刺激的な日々を過ごしていた。そんな中、帰国したときは、再びアパレルに戻る意欲がわかなったMitsuruさん。「再び自分自身のやりたいことという原点に立ち返り心底やりたいことは何かと考えました」と当時の気持ちを振り返った。

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© Mitsuru Wakabayashi

そのような中、普段からお世話になっている先輩から依頼された撮影。報酬が発生し、初めて写真が仕事になった体験をした同時に写真家として生きていく可能性を感じた。最初から順調に事が進むはずがなく、ギリギリで暮らす時期もあったようです。しかし、撮り続けるうちに仕事の依頼も増えて、写真家としても成功の道筋が見えてきた。

写真家として再び迎えた転機

ある時にあった京都の貴船神社の撮影依頼。それは写真家としての流れを変える出来事だった。貴船神社は平安時代から続く歴史ある神社であり、その撮影はアーカイブとしての重要性がある。

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© Mitsuru Wakabayashi

「なぜ写真家になったのか、その原点を考え直すと、写真に夢中になり、ただ写真を撮り続けていたということに気がつきました。デジタルでも写真のアーカイブが残る時代、私は誇張をせず、ただ無我夢中に写真を撮り続け、残すことを大切にしたいです」と当時の想い事を振り返られた。

ーそんなMitsuruさんは、先日、初めての個展『Mitsuru Wakabayashi Photo Exhibition #01』を開催。ライトテーブルに展示されているフィルムをファインダーで覗き込むような内容の展示。写真を撮ることの楽しさが体現された、とても立体的な展示内容は大盛況で終了した。「#01」として改めて幕開けとなった創作活動の、今後の行く先が楽しみである。

幸せな気持ちになれる写真

初の個展『Mitsuru Wakabayashi Photo Exhibition #01』を終えて、Mitsuruさんはどのような思いを抱いているだろうか。

「この展示を通して、印刷された写真を展示することの重要性を改めて感じました。『#02』を開催することも目標にしていますが、根本的にやることは変わりません。時間があれば写真を撮り、休みがあれば単焦点レンズ片手に海外に出て撮影します。写真を撮り続け、常にカメラを持ち歩くことに変わりはありません」と今後の展望を語られた。

もし海外にいくなら、最近の興味は南フランスやポルトガル、インドに渡航したいとのこと。「気持ちが悲しくなるものを撮りたくないんです」と話し、目に優しい幸せな風景を残したいと微笑んで話すMitsuruさんの撮り残す作品を、今後も見続けていきたい。

INFORMATION

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Mitsuru Wakabayashi

京都で生まれ、アパレル業界を離れ、トロントでのワーキングホリデーの準備期間に、カメラを手に入れ、フォトグラファーに転身。Instagramで定期的に作品を公開し、現在は貴船神社の撮影をはじめ、広告、雑誌、SNSメディアなど、国内外で多くのクライアントを持つ。何気ない日常を切り取り、多くは人物が映り込むワンシーンながら、全体の景観美を描写している独自の作風から、写真を通じて後世に遺す意識で制作に取り組んでいる。

Instagram:@mitsuru_wakabayashi
HP:https://mitsuruwakabayashi.com/

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