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2023.10.15

純粋で情熱的に、探究し続ける写真の魅力 | 写真家・コハラタケル | ISSUE #14

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世界中のクリエイターの感性や思考を深掘りする『ISSUE』。新たなインスピレーションのきっかけに。『ISSUE #14』では、SNSや作家活動を精力的にこなされている写真家・コハラタケルさんへの10の質問を通じて、被写体に向き合うその姿に迫る。

目に留まらない存在に気づく

建築業からフリーランスのライターを経て、その後写真家に転身…。そんな異色の経歴をもつ彼こそ、現在多方面でご活躍されるコハラタケルさんである。
Instagramのフォロワーは10万人超え。SNSでも積極的に発信される傍ら、山本文緒さんの『自転しながら公転する』や島本理生さんの『あなたの愛人の名前は』などで書籍カバーを担当。最近では2023年5月27日(土)から8月27日(日)の間、東京・京都のライカギャラリーで写真展『撮縁(さつえん)』を開催した。

「フォロワーが増えても立ち位置は今も昔も全然変わらないですよ」、そう語るコハラさん。さまざまなジャンルで活躍する彼にとって、何が原動力になっているのか気になる人も多いのではないか。

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Image by コハラタケル

「何より『ゴミ』を題材に撮影をするのが好きです。買った瞬間は愛されるのに、必要がなくなり捨てられる。ただ、捨てられたからといって輝きを失った訳ではないし、できるだけ最後の瞬間を見届けたいなと。このあたりは、自分の気持ちに気づいて欲しかった幼少期時代の経験からくるこだわりかもしれません。」

まわりの大人が自分の気持ちに気づいてくれず辛い思いをした幼少期の経験から、〈あまり目の留まらない存在〉に気づいてあげたいという気持ちが生まれた。絶景でない場所を好んで撮影したり、まだ名前が知られていないモデルさんを撮影する。幼少期の経験から始まったこの想いが、今の彼の原点となっているのであろう。

絶対にこの子だという予感

「目に留まらない存在に気づく」、という感性を大切にしながら、記憶に残る作品を撮るためにカメラを構え続ける。

冒頭でも紹介した『自転しながら公転する』の書籍カバーに選ばれた作品は、記憶に残る作品の一つである。そして、作品の被写体でもある、モデルの〈真美さん〉との出会いはとても印象的だ。

知り合いの写真家が運営する時計ブランド〈4 Silent Birds〉が夏に開催するオーディションで、彼女と出会った。

「僕が審査員の1人として参加させてもらった際に、真美ちゃんと出会いました。一目見た瞬間から『絶対にこの子だ』という予感がありました。オーディション後、たまたま彼女を撮影した写真が長編小説の表紙に選ばれて。本当に嬉しかったんですよね。僕の写真を選んでもらったというより、彼女のポテンシャルがそうさせたんだと思います。」

謙虚な姿勢で語るコハラさんだが、その目は真っ直ぐで力強い。普段は気づかれないような存在に目を向け、「上手くいかない中でも、何かを変えたいと葛藤しながらもがいている人」を撮り続けたい。真美さんからは、そんな葛藤と強い意志を感じたと、笑顔で語ってくれた。

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Image by コハラタケル

純粋で情熱的に

写真に真摯に向き合う、コハラさん。写真を初めて7年経った今でも、いいスナップが撮れた時にワクワクする瞬間はずっと変わらない。そんな、日々撮影を続ける彼にとって、写真と切り離された生活は全く考えられない。

今回の取材前にも、知らない場所を散策しながらスナップ撮影をしていたそう。彼の写真への向き合い方は、フィルムカメラを初めて買ってもらった小学生のように、純粋で情熱的だ。

「今日は雲の出方がとても良くて、『この場所からの雲の見え方ってめちゃくちゃいいじゃん』と1人でぶつぶつと呟きながら撮影していました。やっぱり写真を撮ることが本当に好きなんですよね。みんなは冗談というかもしれないけど、写真がなくなれば本当に精神が不安定になって死んでしまうかもしれません。」

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Image by コハラタケル

続けて、「左上にファインダーが配置されているカメラ」を使用することがこだわりだと教えてくれた。カメラを構えた際に左上にファインダーがあることで、被写体が撮影者の顔をより広範囲で見ることができ安心感を与えられる。被写体のことを考え抜いた結果、たどりついた答えだ。そしてその言葉のまま、〈Fujifilm X-Pro3〉と〈Leica QシリーズとM型〉を使用している。

「仕事のことだけを考えると別のカメラという選択肢もあったのですが、最終的に、仕事とプライベートの境目がなくなるようなカメラがいいなと考えました。カメラを構えた時に、ワクワクするカメラが良いなと思っています。」

「いい意味で、カメラに依存している」、そう笑って話すその姿からは、純粋に心が踊る一枚を撮り続けたいという想いが強く感じられた。

苦しみも表現に昇華する

順風満帆に思える活躍ぶりであるが、一方で悩みは尽きないという。
写真だけで生活ができている現状が、いつまで続くのか。そんな大きな悩みを吐露しつつ、表現には苦しみも必要だと伝えてくれた。

「他の人から見て、『私はコハラさんと同じ一週間を送りたくない』といかに思わせられるかが大切で、その純度が高ければ高いほどいい」、活動を始めた頃はかなり苦しい生活を送っていたというコハラさんだからこその言葉だろう。

そして、最後に彼はこう締め括った。「ストイックというよりは、ただ良い写真を撮り続けたいという思いが強くて。その原動力が今に繋がっているんだと思います。やっぱり、怠ければ怠けるほど、いい写真が撮れなくなっちゃうんで。」

純粋に好きだからこそ、情熱を絶やさずに「写真」に向き合い続けられる。そんなひたむきな想いは、写真という枠だけに留まらず、全てにおいて大切なことではないだろうか。

目の留まらない存在に気付き、今日もカメラを構える。影に潜む小さな輝きに、これからもスポットライトを当て続ける。

INFORMATION
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コハラタケル

1984年生まれ、長崎県出身。 建築業を経てフリーランスのライターとして経験を積み、その後フォトグラファーに転身。「#なんでもないただの道が好き」を発案するなど日常の世界観とリンクしたエモーショナルでチャーミングなポートレートでも知られる。 SNSを含むweb媒体での広告写真を中心に活動する傍ら、山本文緒著『自転しながら公転する』や島本理生著『あなたの愛人の名前は(文庫版)』など、カバーにも写真が採用されている。

Instagram:takerukohara_sono1
Twitter:takerukohara

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