90年代は前衛的なデジタルカメラ開発が成された時代
「カメラの絵を描いてください。」
みなさんは、どんな絵を描きますか?描かれた絵には似ているポイントが、いくつもあるのではないかと思います。
現在みなさんが思い描くカメラとしてデザインが安定するまでに、実は様々なデザイン実験が行われてきました。そしてその全盛期は、なんと90年代。1988年、富士フイルがリリースした初のデジタルカメラ〈DS-1P〉を筆頭に90年代は、多くの企業がデジタルカメラに目を向け、開発に取り組んでいました。
もちろん、当時、デジタルカメラの開発は、前例の少ない領域。結果的に今から見ると面白い、少しおかしいなデザインのカメラもたくさんつくられる訳です。今回は奇妙なようで、個性的な90年代のデジタルカメラを紹介します。
Logitech Fotoman FM-1 (1991)
Logitech社は〈Fotoman FM-1〉という初の一般向けデジタルカメラを1991年に発売。価格は995ドルで、当時は非常に高価でした。しかし、カメラの性能は劣悪。0.15MPのセンサーでグレースケールの画像しか撮影できず、デジタルメモリは常に電力源を必要としていたため、電池切れ前に写真をバックアップしなければなりませんでした。もし電池が切れたら撮影された写真がすべて消滅。今では想像できないスペックです。
RICOH RDC-1 (1995)
1995年に登場したRICOH初のデジタルカメラである〈RDC-1〉は、発売当初1,700ドル。短いデジタルビデオを記録する能力など、デジタルイメージングに新たな革新をもたらしました。0.41MPのセンサーは当時としてはまずまずの性能でしたが、カメラの最も特徴的な点はモジュラーデザインで、専用のマウントを備えており、ユーザーはさまざまなアクセサリーを取り付けて〈RDC-1〉の機能を拡張できました。
Minolta RD-175 (1995)
1990年代において、センサーの品質は低かったため、AgfaとMinoltaはプロフェッショナル向けの、Minolta Maxxum 500si Superフィルムカメラと3つの0.38MPセンサーを備えた〈RD-175〉を開発しました。〈RD-175〉は、レンズからの光をプリズムで分割し、異なる色の光を3つのセンサーに送ることで、低光条件での性能を向上させました。しかし、当時にしては高度な技術と性能向上により、RD-175の価格はなんと、9,995ドル!
Nintendo Game Boy Camera (1998)
懐かしきゲームボーイに、実はカメラが装備できました。 1998年に発売されたGame Boy Cameraアクセサリーは90ドルという価格で、世界中の多くの子供たちにとっては初めてのデジタルカメラとなりました。スペックで劣りましたが、2ビットの0.001434MP Game Boy Cameraは手頃な価格、使いやすさ、エンターテイメントを提供し、デジタル写真の基本的な編集や楽しいインタラクティブな活動を可能にしました。これは、現代のスマートフォンでの写真共有機能の先駆者のような技術革新でした。
Nikon CoolPix E100 (1996)
初期のデジタルカメラの使用における課題の一つは、USBを使用せずに別のデバイスに写真を転送する方法の模索でした。ニコンは500ドルの〈CoolPix E100〉で、PCMCIAカードを使用したデジタルカメラを開発し、これを多くのWindowsラップトップに直接挿入できるようにしました。しかし、このカメラは0.3MPの低解像度センサーを搭載し、画像のサイズはわずか512x480であるなど、性能はあまりよくないということ。
生枠が定まっていない時に生まれるクリエイティビティ
いかがでしょうか?スペックはともかく、一つ一つのカメラが、当時抱えていた技術的限界を乗り越えるために、デザインを工夫した開発陣の苦悩が伝わる面白い形状でした。今のようにカメラの形状というものへの固定観念がないからこそ、自由な発想ができたのかもしれませんね。何かと学ぶこと、教訓のあるコンデジ回顧録だったのではないでしょうか。
シリーズとして配信しているコンデジ回顧録。過去のマガジンは以下よりご覧いただけます。