
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大阪に住む私にとって雪というのは非常に縁遠いもので、少し前までは年に1日2日は積もる日があったと親は言うものの、少なくとも私が生まれてこの方、大阪でそんな光景を目の当たりにしたことは一度も無い。雪景色を見るというのは北陸や東北、北海道といった豪雪地帯に旅行に行った時だけのお楽しみであり、毎度その新鮮さに感動している。 私がこの写真を撮ったのは、2025年2月初旬、数年に一度の最強寒波到来と謳われた時期で、Instagramに流れてくる日本全国の様々な雪景色にとてつもない羨ましさを感じ、大学入試の2次試験も近く忙しい身だったのだが、何とか時間を作って北陸への撮影小旅行を敢行した。時間とお金のことを考え、金沢は断念せざるを得ず、福井行きを決断する。ただ雪景色が撮れれば良かったのだが、普段ストリート写真を好んで撮っている私は、どうしても「街」に行きたくて、福井市を選んだ。 大阪から福井へ向かう道中、敦賀での乗り換えがあり、それも40分の空きがあったため、駅前を少し散策することにする。見慣れない幻想的な白の世界に興奮が止まらず、数十秒に1枚のペースでシャッターを切り続けた。段々と降雪の勢いが増してきたところで目に留まったのが、住宅街の道の真ん中に佇む1匹のカラス。夜空に浮かぶ月のような存在感を放っている。いつもなら絶対に気にも留めないカラスが、この瞬間だけは私の心をぐっと掴んできた。静寂を司る者としてのその風格は、孤高そのもの。ただただ格好良かった。 撮影日から1週間以上が経過した今でもこの日の記憶は鮮明に回想される。今すぐにでももう一度味わいたい。これから冬が忙しくなりそうだ。
SONY ILCE-6000