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ある夏の平日、定期試験のため午前中に学校が終わった。そのまま真っ直ぐ帰るのがつまらなかった私は、SNSでよく見る定番構図のロケハンでもしようと大阪駅を訪れた。そこで、今まで見たことのないパターンで光と影が縞模様をなしているのを発見する。思わず時の広場の辺りを駆け回り、平行が崩れるまで撮り続けた。 この作品は、この時撮影した数少ない写真のうちの1枚で、「光の孤独」をテーマとしている。 普段私たちが見る世界では、光の海に影という陸地が浮いていることが大半である。しかしこの空間ではそれが逆転している。その光の孤独さを、中央下のホームに立つ1人の男に託した。 また、この作品をはじめとした“光と影”の写真には、私が父親から教えられたある信条を込めている。「お陰様」である。光を遮る何かの存在によって影が生じていると捉えるのが普通だろうが、逆に影が無ければ光は存在し得ないとも言える。私たち人間はみな須くして多くの他人の恩恵を受けて生きているが、そんな「お陰様」が見えずに傲慢に振る舞ってしまうことがあるだろう。輝けば輝くほど光の中から影を覗くことは難しい。一方で影から見ると光の中は丸裸である。だからこそ、「お陰様」の存在を意識し感謝しながら謙虚に生きていかなければならないのだ。 そんな社会の縮図としての意味をも写真を通して表現しうるということを伝えられる写真を撮り続けていきたいものだ。
SONY ILCE-6000