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35mmフィルムを使って宇宙の写真を撮れると思いますか?
写真家ジェイソン・デ・フレイタス氏は〈国際宇宙ステーション(ISS)〉が太陽の前を横切る瞬間を、35mmフィルムで収めることに成功しました。フィルム写真で暗い宇宙の写真を撮影することは難しいです。その中で撮影に成功した彼のプロセスが注目を浴びています。太陽を横切る一瞬のタイミングを逃さず撮ったことは世界で初めての快挙です。

© Jason De Freitas | 黒い点の粒子が国際宇宙ステーションのシルエットである。
フィルムカメラ×望遠鏡で挑んだ撮影
撮影を計画するにあたって、フレイタス氏は〈ニコンF5〉を選びました。〈ニコンF5〉はフィルム一眼レフカメラとして高速連写能力(秒間8コマ)を誇り〈国際宇宙ステーション〉が太陽を横切る瞬間を連続撮影するにはふさわしいカメラでした。
さらに〈Celestron Edge HD 8インチ望遠鏡〉に〈太陽観測フィルター〉をつけ、太陽の壮大な姿をクローズアップ。高いISO感度を誇る〈Kodak P3200フィルム〉をISO1600設定で使用し、動きのある被写体を鮮明に捉えつつ、粒子の粗さも控えめに抑えるというバランスを意識した撮影を行いました。
精密な計画とその行動力
2024年3月9日。国際宇宙ステーションが太陽を横切るのは、わずか0.98秒間という予測。
フレイタス氏は〈Transit Finder〉というサイトを利用し、撮影の正確なタイミングを見極めました。撮影場所としては、視界の広いオーストラリア、ニューサウスウェールズ州の沿岸部に位置する展望スポットを選択しました。
そして、撮影の決行日。彼は36枚のフィルムを装填した〈ニコンF5〉のシャッターを切ります。
今に刻まれたアナログ写真史の1ページ
数日後、現像したフィルムには、〈国際宇宙ステーション〉のシルエットが鮮明に残っていました。フィルムにシルエットが浮かび上がるまで「もし何も写っていなかったら」という不安な気持ちに駆られていたでしょう。

© Jason De Freitas | 2枚しか撮れなかったうちの1枚。
「実際のところ、国際宇宙ステーションが太陽を横切る瞬間は2枚しか撮れませんでした。ほんの数秒シャッターを切るのが遅れていたら、ただの太陽だけが写る写真になるギリギリのところでした」とフレイタス氏は振り返ります。
まさに、決定的瞬間の写真。フレイタス氏は「この挑戦を達成できたことは、深い誇りと共に、新たな情熱が湧いています」と語ります。デジタル技術を駆使し、天体写真が撮影できる時代において、アナログ天体写真へ挑戦する情熱にエールを送りたいですね。