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2023.12.08

環境への影響で捉えるAIの功罪 | Knowledge #10

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生成AIはオリジナルのコンテンツを生み出す力を持ち、しばしばアーティストや著作権保有者の権利、さらには人々の労働に関する観点から議論されます。しかし、環境への影響についてはあまり注目されていません。

私たちの創作活動をパワフルにサポートしてくれる存在になりつつあるAIを、エネルギーや環境への影響という観点で興味深い示唆を与えてくれる研究を見ながら、思考を巡らせてみましょう。

タスクによって異なるエネルギー消費

AIスタートアップ企業の〈Hugging Face〉の研究者が、カーネギーメロン大学の科学者と協力して行った研究では、AIがこなすタスク・作業に応じて排出される二酸化炭素に着目し、排出量を正確に測りました。

研究から判明したこととして、テキストを分類するなどの簡単なタスクでは、クエリ1,000回あたりおよび0.2 ~ 0.5gの二酸化炭素が排出される一方で、最近注目されている画像生成では1,000枚の画像を生成するのに、最大で1,000gもの二酸化炭素が排出される可能性があります。

つまり、テキスト分類などのシンプルなタスクは、エネルギー効率が高く、排出量が比較的低い。一方で、画像生成のような複雑なタスクでは、エネルギー消費が著しく増加し、排出量も増えるということです。

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Image by Douglas

またエネルギー消費量という観点では、1000枚の画像を生成するためには2.907 kWh必要でした。この数字自体はさほど多くないように思えるかもしれませんが、電気自動車メーカーである〈Tesla〉のModel 3という車種のバッテリーを完全に充電するのに必要なエネルギーは50kWhであり、画像生成に換算するとたったの17,200枚にすぎません。

最近では〈DALL-E〉や〈Midjourney〉、〈Adobe Firefly〉などさまざまなプラットフォームで大量の画像が生成されており、もし今回の研究と同等のエネルギーが必要だと仮定すると毎日数千台、数万台にもおよび電気自動車を充電できるほどのエネルギーを消費しています。

これだけではない、見えづらい環境への影響

AIはタスクを実行する際にもエネルギーを消費しますが、実はモデルのトレーニングとデプロイにはもっと多くのエネルギーを必要とします。
実際にはモデルのトレーニングのコストを算出することは難しいと言われていますが、「タスクをこなすことよりも桁違いにエネルギー消費が起きる」ことは知られています。

最近人気の高まりが留まるところを知らない〈ChatGPT〉に関しても、1,750億ものパラメーターを使用した〈GPT-3〉のモデルのトレーニングには1,287 MWh が必要であることが示されています。

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Image by doraseiji

AIと人間が生み出す創造性

AIを環境への影響という観点で捉えてみると、エネルギー消費や二酸化炭素の排出量など考慮すべき問題は確かにあります。
しかし、画像編集や合成が専門知識や高度な技術がなくてもテキストで指示を送るだけで実現できるように、AIによってもたらされる恩恵も少なくありません。

未来のAIの発展は、もしかすると私たちの向き合い方にかかっているのかもしれません。

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