なぜ、日の丸構図はかりやすく伝わるのか？ | Knowledge #3

あまりにも自明な通念や概念は、いざ「なぜ」という意味を問われたときに、その理由について言葉で説明することが難しいです。例えば、写真家にとっては、共通言語になっている「構図」。構図の定義を説明することはできても、その機能や役割など、写真において構図はどんな意味を持つのか説明することは簡単ではありません。

写真にまつわる知識を深掘りし、思考を巡らせる『Knowledge』シリーズ。今回は写真を撮る上で基本的な構図と考えられる〈日の丸構図〉の機能や役割について迫ります。

構図とは、なんでしょうか。

言い回しはいくつかありますが、基本的に、構図は「構成」と考えて良いでしょう。映画でいうところの脚本。作り込まれた脚本が観客の感情を物語に導くように、作り込まれた構図は、見る側の視線を作品が伝えたいメッセージに誘導します。構図の役割は、視線を作品の主役に導くこと。作品のメッセージや意図を伝えるためのある種の共有ルールが構図だと考えらえるでしょう。

色々と細分化されている構図の中で、最も一般的に知られているのは、被写体が画面の中央に配置される〈日の丸構図〉。〈日の丸構図〉は、主題の強調や直接性にあります。視覚的に簡潔であり、特定の被写体に焦点を当て、視覚的に力強く、主題を明確に伝えます。

一方で、〈日の丸構図〉のわかりやすさには注意を払う必要もあります。よく知られた一般的な構成であり、時には視覚的な新鮮味に欠けることがあります。主題となる被写体にまつわるコンテキストに応じて、写真の面白さが左右されやすいので、時には「そこに、〇〇がある。」という捉え方をされ、それ以外のメッセージを含みづらいことがあります。

しかし、誰も目につけなかった被写体に焦点を当て、そのモノの本質を問い直すことができるならば、そこには新しい物語が生まれるかもしれません。簡潔でも「美しいものは、ただ美しいしく」、視覚的に優しく心地よい一枚としての可能性を潜めています。

日の丸構図には、そのシンプルで直接的な特徴から、写真家が見るものすべてがまっすぐな形で表れるのかもしれませんね。目のつけ所が良い方は、迷ったらとりあえず日の丸構図で撮るだけでも、魅力的な写真に仕上がるかもしれません。

最後に、2023年10月28日（土） 〜 2023年11月27日（月）の間、日の丸構図をテーマにしたcizucu主宰フォトコンテスト『Visual Symphony in Round』を開催する予定です。ぜひ、クリエイターのみなさんに見えるまっすぐな世界をコンテストを通して、シェアしてください。